イタリア糖原病協会『学校教育便覧』

            原文:https://www.aiglico.it/wp-content/uploads/2022/12/Vademecum_20221205.pdf

                                                                                彦坂ゆね・嶺井正也共訳

            学校教育便覧 

              糖原病の子どもと若者のインクルーシブ教育                             

                 イタリア糖原病協会


 この文書の最初のバージョンは2018年から2019年にかけて、10年以上の豊富な支援教師経験があったマリア・グラツィアとの協働で作成したものです。

2022年11月に、その内容とグラフィックを更新したものがこの版になります。 この文書は、糖原病患者およびその家族、そして彼らに同行し、支援する教師、学校、医療機関向けの相談用としてのみ使用されることを意図しています。

 そして、これはイタリア糖原病協会のインクルーシブ教育プロジェクトの一部になっています。以下の文書は、たとえ一部であっても、許可なく複製すること、無断転載を禁じます。


 著作権者 

・原文:Maria Grazia Brambilla, Chiara Volonterio, Angela Tritto

 ・テキスト改訂 :Anna Paola Bianchi, Elena Piatti, Fabrizio Seidita, Chiara Volonterio 

・表紙画像:Andrew Ebrahim on unsplash 

・グラフィックデザイン:Anna Paola Bianchi e Chiara Volonterio   


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         目次 

           説明と紹介

           1. 権利としての学校教育

           2. 糖原病患者のニーズ

          3. 参照規定

           4. 疾病認定と保護措置 

           5. 登録と入学

           6. 学校の義務

           7. 特別な注意事項

           8. 困難な場合 

           用語集 

           謝辞  

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          説明と紹介 


          イタリア糖原病協会の紹介

 イタリア糖原病協会(AIG)は、1996年に両親のグループによって設立された任意団体(ODV)です。それ以来グリコーゲン代謝に関連する希少遺伝性疾患である糖原病について、情報発信と啓発活動を行い、また、患者やその家族に治療・管理の支援を行っています。 私たちは常に医師、研究者、この分野の専門家彼は一緒に活動してきました。科学研究に資金を提供し、促進するだけでなく、企画や会議、資金調達行事を主宰し、積極的に参加しています。


           インクルーシブ教育プロジェクト

 私たちの協会は、学校は教育や文化のためだけでなく、社会性や外部とのつながりを育む上でも、子どもや青少年が歩む道にとって基本的な通路であると信じています。 そのため、私たちは糖原病の子どもや若者のニーズに寄り添った環境と道筋を作り、かれらのニーズ全てと教育を尊重するために、家庭、学校、教員、職員、生徒を可能な限りの支援を行うことを目的としてインクルーシブ教育プロジェクトを立ち上げました。 この学校教育便覧は、私たちが立ち上げているプロジェクトのほんの一部に過ぎません。当協会は最新の情報や研究成を集めているだけでなく、助言や研修を行ない、あるいは学校での受け入れが困難な場合、あるいは個々の事例のフォローアップなどにも対応しています。   


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         学校教育便覧(School Vademecum )

「学校教育便覧」は糖原病という困難に遭遇した子どもや若者の家族からの多様な支援要請にこたえるため、イタリア糖原病協会が作成したものです。すべての関係者を最大限に支援するために、この手引きはあらゆる段階・種類の学校で教育活動が可能になるように設計されています。この中には 従うべき手順と規制、およびあらゆる種類の糖原病についての有用な予防手段が盛り込まれています。 私たちの意図は、医学的な理由で厳密さが求められる場合を除き、糖原病の種類ごとの標準的な分類を超えて、子どもや若者の考えられるすべての可能なニーズを満たすことができる提案を含む、実際的で網羅的な手引きを作成することにあります。 


 この便覧がより網羅的で正確になるよう、もしも誤りやタイプミスがあったり、また、何か提案がある場合には、電子メールを送ってください。喜んで情報やコメントを受け取り、必要に応じてガイドを更新します。


                 お問い合わせ方法


 私たちの協会はミラノ県アッサーゴに本部事務所を置いていますが、国内全域に居住する糖原病の患者と家族のニーズに最大限に応えるために、オンラインでの相談や会議を行っています。 AIGlico に連絡したり、アドバイスを得たり、会議をスケジュールしたりするには、次の方法があります。

 • (+39) 02 45703334 に電話してください

 • info@aiglico.it または segreteria@aiglico.it に電子メールを送信してください。

 あるいは、電話による患者と家族の支援専用の Voce Amica サービスをご利用いただくこともできます。 Voce Amica サービスは無料で、月曜から金曜の 10.00 ~ 13.00 の時間帯で利用できます。 午後3時から午後6時まで。 電話のみの対応となります。

 Voce Amica への連絡先の電話番号は (+39) 331 9485440 です。 


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            1. 権利としての学校教育 


 学校や教育の経験は、イタリア憲法の第3条、第4条、および第34条で定められているように、その特性に関係なく、あらゆる点であらゆる人の権利とみなされています。 


イタリア憲法第3条

 すべての市民は同等の社会的尊厳を有し,性別,人種,言語,宗教,政治的見解,個人的および社会的状況により区別されることなく,法の前に平等である。市民の自由,平等を事実上制限し,人間の完全な形成およびすべての労働者の政治的,経済的,社会的組織への実質的参画を阻止する経済的および社会的秩序への障害を除去することは,共和国の務めである。                                                           

イタリア憲法第4条 

共和国はすべての市民の労働権を認め且つその権利を実効させる諸条件を推進する。各市民は,その能力と選択に従い,社会の実質的又は精神的進展に資する活動又は機能を果たす義務を負う。  


イタリア憲法第34条                                             学校は万人に開かれている。最低 8 年間の初等教育は,義務であり且つ無償で行われる。能力があり優秀な生徒は,資力に欠ける場合でも,より高度な教育を受ける権利を持つ。共和国は,奨学金,家族への手当て,その他の対策により,前項の権利を実現する。これらの措置は,選考により与えられなければならない 。


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           2. 糖原病患者のニーズ


 取るべき基本的なステップの1つは、患者のニーズが何であるかを明確にすることです。この方法によってのみ、患者のニーズに確実に適切に対応することができます。 糖原病を持つすべての人が同じ種類のニーズを持っているわけではありません。以下は、糖原病者とともに生きるときに満たす必要がある主なニーズの簡単な一覧です。   


<栄養ニーズ>

  • 食事の介助  

  • 間食の管理 

<衛生ヤ生理についてのニーズ >

 •トイレの使用の援助

 ・個人の衛生管理の支援 

<移動ニーズ > 

 • 旅行支援

 • 移動の補助 

<社会的およびコミュニケーションのニーズ >

 • 社会的関係の発展の支援 

 • コミュニケーション支援 

<健康ニーズ> 

・看護ケア 

・初期低血糖症状の統制 

・血糖測定支援 

・薬物投与 

<インクルージョンのニーズ> 

 ・活動、道具、環境へのアクセス支援 

 ・グループ活動での(クラスへの)支援 

 ・校外学習や修学旅行における(クラスへの)支援 

<息抜きニーズ(Bisogno di svago)> 

 ・レクリエーション活動の支援 

<平穏のニーズ (Bisogni di tranquillità)>

・家族との関係維持   

・患者の状態を頻繁な更新  


病気や障害のある人のニーズを「特別なニーズ」と考える傾向があります。しかし、ニーズはすべての人に共通するものであり、唯一の違いはそのニーズを満たす方法が異なるだけなのです。基本的なニーズは変わりません。したがって、家族として、あるいは個人として、自分自身のニーズを持つことは正しいということを忘れてはなりません。 


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                  3.関連法規 

 糖原病を抱えて暮らす生徒のニーズを守るため、これらを保護し、インクルーシブ教育を保障する法令には次のようなものがあります。

    ・1992年2月制定の法律第104号

     • 2017 年 4 月 13 日の立法命令第66号(2019年8月7日の立法命令第96号で修正されていま 

    す。)

 1992年法律第104号は、病気や障害のある人々の者の保護、つまり、権利や社会的包摂、支援に関することを規定しています。インクルーシブ教育についての規定は第12条にです。 この法律の全文は、官報(Gazzetta Ufficiale)のウェブサイト(https://www.gazzetta ufficio.it/) で参照できます。紙幅の都合上、この指針には掲載していません。 


 2017年立法命令第66号は2019 年8月7日立法命令第96号で修正されました。 2017年立法命令第66号に若干の修正を加えた第96条はもっぱら障害のある生徒のインクルーシブ教育の促進に関するものです。特に、第1条が有益です。この条項は以下に掲載していますが、官報でも確認できます。

 第1条 インクルーシブ教育 

1.インクルーシブ教育は

(a) 生徒の多様な教育的ニーズに対応し、自己決定権と合理的配慮を尊重しながら、生活の質の向上という観点からすべての人の可能性を伸ばすことを目的とした教育・訓育活動を通じて達成される; b)同一的な文化、教育、計画や学校の組織・カリキュラムを通して、また、学校や家庭、地域で活動している公私の機関との間で行われている個々の活動との明確な共有によって達成される、

 c) 生徒の教育的成功の確保に貢献する学校共同体のすべての構成員が、それぞれの役割と責任の範囲内で行う基本的な取り組みである。 

2. 本立法命令はインクルーシブ教育および社会的包摂の過程の不可欠なパートナーとして、家族や関連団体の参加を促す  。

                                   DL66/2017, art. 1

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          4.障害認定と保護措置 

インクルーシブ教育の実現はまず家庭から始まります。最も適切な手段を確実に、しかも継続的に手に入れるには、まず適切な認定と保護を得ることが必要です。


       障害状態の認定(l’accertamento della condizione di disabilità)

 インクルーシブ教育実現を目的とした1992 年 2 月 5 日の法律第104号に基づき、発達年齢における障害の状態の認定をINPS(全国社会保障機関)に申請する必要があります。INPSは提出日から30日以内に回答するようになっています。

手順

 • 糖原病の診断書を持って一般開業医(GP)または自由選択小児科医(PLS)に行き、INPSに対し、発達年齢における障害状態の認定申請を行うよう依頼し、証明書を取得し、またまた地方保健局(ASL)による臨床診断と機能診断書付き紹介状をもらうようにします。

・ 医師は、この紹介状を電子で INPS に送信することにより、申請手続きをすることになります。 • 利用者は、SPID認証情報を使用して INPSのウェブ・サイト経由で、または認可組織に連絡して、独自に申請書を提出できます。未成年者または障害者の場合、申請書は親および/または保護者が提出しなければなりません。

 • 申請書と提示された書類の送付後、INPSが30日以内に健康診断の日付を通知します。健康診断は申請書の送信から最長30日以内に実施する必要があり、腫瘍性症の場合は最長15日以内に短縮されます。 利用者はINPSのウェブサイトからSPID(*注)認証情報を使って、あるいは公認の後援者に連絡して、独自に申請書を提出することができます。未成年者または身体障害者の場合、申請書は親または保護者が提出しなければなりません;

・INPSは、申請書と提出書類の提出後、30日以内に健康診断の日程を通知します。この健康診断は、申請書の提出から最大30日以内に実施されなければなりませんが、腫瘍性病変の場合は15日以内に短縮されます。 

  *SPIDは一種のデジタルIDです。イタリアの行政機関のオンラインサービスに素早くアクセスする 
  際に必要となるツール


 発達年齢に応じた障害認定を行う医療委員会は、委員長を務める法医学者1名に加え、小児科または小児精神神経科の専門医1名と当事者の健康状態を知る固有の専門医1名の計3名で構成されます。この委員会には、補助の専門家、ソーシャルワーカー、または自治体やINPSが指定した公共施設で認定する場合はその公共施設に勤務する心理士が、その他の場合にはINPSの医師が加わります。                                        


・希望に沿った障害認定がなされた場合、手続きはI1992年法律第104条にもとづくIPSによる障害状態確認書の発行をもって終了します。逆に認定がなされなかった場合、家族は6ヶ月以内に異議申し立てを行うことができます。この場合、居住地にある後援会に連絡することが有効です。 障害認定証明書が得られれば、インクルーシブ教育の過程で、1992年法律第104号で規定されている教育、福祉、支援措置を受けることができます。同法に基づく生徒の障害状態の調査報告書を入手した後、家族はその報告書を居住する地域のASLの学際的医療委員会(U.V.M.)に提出し、機能プロフィールを作成しなければなりません。            


                 機能プロフィール

                (旧機能診断および動的機能プロフィール) 

 1992年法律第104号による生徒の障害状態の認定報告書を取得した後は、機能プロフィール(PDF)を所持している必要があります。 この文書は、2019年1月1日より、機能診断・動的機能プロフィールに取って代わ り、これらを包括するものとなりました。

        *訳者注:新しい機能プロフィールは、従来の二つのプロフィールをWHO設定のICF  

        (国際生活機能分類)による障害認定のこと 


 機能プロフィールは障害の状態が確認された後に学校への入学手続きを開始するために必要なもので、保健当局の新しい委員会である複合評価ユニット(U.V.M.)によって作成されます。この委員会は、専門医または本人の健康状態の専門家、児童精神神経学の専門家、リハビリテーション療法士、ソーシャルワーカー、または 本人を担当する地方自治体の代表者によって構成されます。

これらの書類(法律104/92に基づく障害状態の認定報告書と機能プロフィール)を入手したら、両親または親権者は個別教育計画(IEP)と個別プロジェクトをそれぞれ作成する目的で、それらを学校と管轄の地方自治体に送付します。 こうすることで、必要な場合、希望する学校や施設での支援、教育、看護を要請することができるようになります(訳者注:個別プロジェクト、個別教育計画およびインクルージョン プランは、認定障害のある生徒のインクルーシブ教育をすすめるための「羅針盤」となる計画文書。個別プロジェクトは障害のある個人のインクルージョンを実現するために必要な各種支援、サービスを明示したもので居住自治体が作成。個別教育計画は各学校で関係者の合意にもとづいて作成される。)

 *注:現在、機能診断書と動的機能プロフィールをお持ちの方は、機能プロフィール に変換される

 までの間、これらの書類を引き続き使用することができます。  


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                 5. 登録と入学 

 入学する前に、希望する学校や教育機関のウェブサイトを参照し、施設・設備やサービス (例: 校内食堂) について調べることをお勧めします。あなたの地域に学校や教育機関以外にも選択肢がある場合は、提供されるサービスを考慮して、お子様のニーズに最も適した学校を選択することをお勧めします。           

               幼児学校

 母親学校としても知られる幼児学校では、紙媒体とオンラインの両方の方法で登録を行うことができます。就学プロセスを有効にするため申請書を紙媒体で提出する場合は、前章で述べた書類もすべてを1通の封筒に入れて提出することが望ましいです。登録をオンラインで行う場合は、初等学校と中等学校についての次の説明と同じようにして下さい。  


             初等学校と中等学校 

  初等・中等学校への登録は教育省のウェブサイトを通じオンラインで行います。 次のようにする必要があります。 ・オンライン登録フォームに必要事項を記入します。もし 診断調査やアセスメント、法的・社会的保護に関連する場合は、その旨を登録フォームに記載すること。 ・登録用紙に記載された期限までに、学校事務室に提出してください。前章で説明した取得した書類をすべて学校事務室に持参します。学校事務局に持参すること。 

・6月中に学校長との面談を申し込み、希少疾患と子どものニーズについて説明をすること。この面談の後、校長はその生徒を受け入れるのに最も適切なクラスを決定します; 

・9月に入ったら、子どもの疾患と二ーーズを説明するため、クラス担任教師やインクルージョン担当教師を交えて面談することを校長と合意しておくこと。 

・また、9月の面談の際に、緊急時の対応に必要な書類(緊急時のカード、紹介元の病院から発行された手紙、連絡先、便利な電話番号など)や必要に応じて使用する薬や使用方法を明記した書類(事務室で入手)を事務局に提出すること。 ・11月末までに、クラス担任教師はIEPを作成しなければなりません。   


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             6.学校の責務 


 インクルージョンを促進するために、学校はインクルージョン責任者を任命します。責任者はいわゆる「インクルージョン・プロジェクト」(2017年暫定措置令第66号第5条第2項bによる)の立案会議を開催し、そこで進路に関わるすべての関係者(校長、インクルージョン責任者、地方自治体およびASL/AUSLの代表者)および家族が実施すべき活動を決定しなければなりません。このようにして暫定措置令は実施され、具体化されます。 

 さらに、校長は次のことをしなければなりません: ・指定されたスタッフ(支援教員および/または自治体教育補助員-AEC)も交えて週あたりの特定された時間数を保証すること。

・ソーシャルワーカーと連絡を取り、症状の適切な管理(食事療法、看護ケア、関連スタッフなど)に関するすべてのニーズを支援すること;

・学校はまた、生徒のプライバシーと尊厳を完全に尊重した上で、生徒の治療や治療のための適切な場所を指定すること。また、救命薬や生徒の健康を守るために必要な機械や器具を適切に保管すること。また、薬の管理責任者の名前を家族に通知し、応急処置手順(秘書室に届けられた緊急管理文書を参照)を確実に踏まえ、必要な場合には緊急サービス118に連絡し、家族に連絡すること。


 前述の9月の会議には、校長、生徒の家族、インクルージョン・オフィサー、ク ラス担任、支援教員、市町村から派遣された教育関係者も参加することが望まし い。加えて、学校関係者全員を対象とした研修コースを関係機関を通じて開催す るのも良い方法でしょう。


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             7. 特別な注意事項 


緊急時やいざという時のために、必要なものをすべて入れた箱を用意し、教室や アクセスしやすい場所に置いておきましょう。

その内容は、糖原病のタイプによって変えることができ、また、患者ごとによっ ても大きく異なることから、患者の特定のニーズに関しても変える必要がありま す。ここでいくつかの提案があります。 

・緊急事態にどのように対処するかについての明確で簡潔な指示(9月の会議ですでに先生方に示された)と、すべての有用な連絡先情報を含めておくこと 

 ・血糖値を検出したり(グルコメーターなど)、低血糖になった場合に対処したりするための便利な道具(33%グルコースのバイアル瓶や投与用の滅菌済み注射器など)を入れること。

 - 飽和度のモニタリングに有用な器具(飽和度計など)。

 さらに、生徒の活動への参加を促し、容易にするために、教具(机、椅子など) や、必要であれば、個人の特性に合わせた補助具を使用しましょう。例えば、高 さ調節可能な机は、移動が困難な人や車椅子を使用している人にとって重要な学 習補助具になります。


 *低血糖の場合、患者を治療しているセンターが提供する適応症に従い、個々の患者の特徴に応じて、適時かつ的確な方法で介入することが必要になります。例として、1型糖原病に対する緊急介入に関するロンバルディア州の診断と治療方法を以下に示しておきます。 


 「低血糖緊急事態の場合: 

1) エネルギー消費量の増加

 2) 摂食量の減少 

3) 吸収作用の低下(嘔吐-下痢); グルコース溶液の経口投与または経鼻胃管(SNG)投与が必要である(例:血糖値、年齢、体重に応じて33%で5~10ml)。」

                      PDTAロンバルディア州、2022年4月更新、11頁


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               8. 困難な場合 


 様々な理由により、希望するインクルーシブ教育の学校への入学を実現することが困難な場合があります。その場合には、すでに「説明と紹介」の節で指摘したように、イタリア糖原病協会に問い合わせ、説明、比較検討、助言を求めることができることをお知らせしておきます。

           

  1.                  協会ができること 

当協会は、一般的な方法として、法的助言を含め、比較検討、説明、聴聞、助言に応じることができます。さらに、生徒のインクルーシブ教育の実現に向けて、積極的な役割を果たすこともできます。その実践例です。

・校長やソーシャルワーカーなどの関係者と連絡を取りながら、インクルージョン・プロセスの実施に積極的に関わること。病態やその管理に関する情報や指導を提供すること

・2017年暫定令第9条により、事前の同意があれば、「個別インクルージョン・プロジェクト」の作成のための「狭義の席」につくこと 

・潜在的に危険な症状の早期発症や一時的な介入の必要性を発見するために、教員や職員を対象に、この疾患に関する特別な研修コースを開催すること 

・学校や教育機関に、糖原病の生徒のいるセクションやクラスで生徒が積極的に参加できるような教材(本、短編小説、その他の刺激的な教材)を提供すること


       イタリア糖原病協会はいつでも親身になって相談に乗ります。連絡先はすべてAIGlico

       はいつでもご相談に応じます。連絡先はすべて、本書の冒頭にある「説明と紹介」に 

       記載されています。  


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               用語解説 


 この便覧の中でマゼンタ色(訳注:カラーでの翻訳掲載が出来ないので原文を参照のこと)で書かれている用語は一般的でなかったり、あるいは特定の語彙の一部となっていて一般的に使用されていません。そこで本文の全体の理解を助けるために、ここで解説しておきます。以下、初出順になっています。


< 糖原病>:この用語は、ブドウ糖代謝に関連するまれな遺伝性疾患のグループを示します。遺伝的欠陥により、ブドウ糖の分解に関与する酵素の欠損や機能不全が起こる。糖原病にはいくつかの種類があります。関係する酵素の種類や症状が最も影響を受ける身体の部位によって異なります。肝型糖原病と筋型糖原病とは違っており、症状も大きく異なっています。 

<糖原質>:ブドウ糖分子が直鎖と側鎖で結合した複合糖質。体内では主に肝臓と筋骨格系に貯蔵されます。 補助具:この用語は、本人の自律性を確保したり、できるだけ維持したり、介助を容易にしたり、生活の質を向上させたりするために役立つ、多種多様な道具を指す。よく知られているのは、歩行や移動の補助に使われるもの(杖、松葉杖など)で、その他、衛生や身の回りの世話、調理、筆記、描画など、日常生活のさまざまな動作の補助に役立つものもあります。通常、リハビリテーション医、作業療法士、理学療法士などの臨床的・技術的な専門家の助言を受けながら、使用者の特性やニーズに基づいて選択することになります。

< 機能プロフィール(PDF)>:これは、個別プロジェクトおよび個別教育計画(IEP)の作成に必要な準備書類です。インクルーシブ教育に必要な専門技能、支援手段の種類(支援教師、学校補助員、自立支援員、コミュニケーション支援員など)、構造的資源(補助具、障害除去など)を明示してあります。これは、障害のある生徒の自己決定権を最大限に尊重し、学校長または学校の教育支援を専門とする教員の参加を得て、保護者と生徒本人の協力を得て作成されます。 機能プロフィールは、国際保健機関(WHO)が採択した国際機能・障害・健康分類(ICF)の生物心理社会モデルの基準に従って、障害状態の評価に続いて作成されます。この文書には、機能診断と動的機能プロフィールが含まれ、幼児学校から始まる各教育段階を経るごとに更新され、また、その人の機能に関する新たな状況や監視的状況が存在する場合にも更新されます。

< 個別教育計画(IEP)>:障害のある生徒一人ひとりの学校生活プロジェクトであり、その機能プロフィール(今日でも、機能診断と動的機能プロフィールに基づく場合もある)に基づき、取り組むべき軸/領域を特定し、達成すべき目標を事前に決定し、それを達成するために有用な資源(専門的、人的、技術的)とともに実施すべき介入策を決定します。その起草はGLO( Gruppo di Lavoro Operativo:作業委員会)の責任であり、以下のような多くの人物によって構成されます。 

・支援教員や担任教員またはクラス協議会のチーム。 

・親または保護の責任を負う者 

・家族が参加を依頼できる、民間の専門家を含む学校施設の内外の特定で、クラスや障害のある人と交流する特定の専門家

・学際的な評価ユニット 

・自己決定の原則に従う障害のある生徒(高等学校に在学する生徒に限る)。

 ある学年から別の学年に転校する場合、学校長は、継続性と責任(関連ファイルの転送も含む)を確保するために、その後生徒を受け入れることになる学校と取り決めをしなければなりません。この場合、IEPは前学年の教員の協力を得て実施されなければなりません。       

  注:障害のある生徒の家族は、IEP の作成に関与するだけでなく、IEP に署名し、そのコピーを   

    受け取らなければならないことを忘れないでください。




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            謝辞 

 

この便覧の作成は、マリア・グラツィア・ブランビッラ夫人や弁護士の エレナ・ピアッティを含む、時間、献身、知識、プロの力を捧げること を決意した人々の助けなしには不可能でした。 このプロジェクトの誕生を望み、確実にしてくれた方々、そして何より も、解決すべき「問題」を抱えて私たちに相談に来てくださった方々に、 心からの感謝を申し上げます。なぜなら、この便覧が今日存在するのは まさに彼らのおかげだからです。


嶺井正也の教育情報

日本やイタリア、国際機関の公教育政策に関するデータ、資料などを紹介する。インクルーシブ教育、公立学校選択制、OECDのPISA、教育インターナショナルなどがトピックになる

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