図書紹介:市川昭午著『学校経営学への期待』

 なんと94歳になられる市川昭午先生が、この6月1日づけで「学校経営学への期待を教育開発研究所から公刊された。多数の著書がおありだが、そのなかでも半数以上を教育開発研究所から出版されている。同所が発行している『教職研修」という専門誌に継続的に執筆されている、その成果である。本書も主要部分は2019年9月号~2021年11月号に執筆されたものであるが、出版に際しては大幅に加筆されたとのことである。90歳を超えてからの執筆と94歳になってからの加筆作業、にわかには信じがたい。

 さて本書の構成は次のようになっている。

 第Ⅰ章 ”経営”の氾濫と「経営」の欠落

  ・学校に経営はあるのか

  ・公立学校に「経営」はない

  ・旧学制下の学校管理論

  ・学校”経営”論は学校教育論

 第Ⅱ章 用語の混乱と整理の失敗

  ・入り乱れる諸概念

  ・関係概念整理の試み

  ・改名変身という呪術

 第Ⅲ章 教育の経営学と教育経営の学

  ・”教育経営”という妖怪

  ・教育の「経営学」ではない

  ・旗幟不鮮明で対象も不明確

第Ⅳ章 実践志向と法令頼み

  ・教育実践と教育研究 

  ・実践性と学術性の両立

  ・法規不在と法令依存

終章 学校経営学への期待

 

 本を開いてまず目についたのが、「第Ⅲ章」にある「”教育経営”という妖怪」という節であるというもの、大学院博士時代、研究室で『教育経営の基礎理論』(伊藤和衛編著、第一法規、1974年)という本を出したことがあるからである。

 そこで注をみると、この本はとりあげられていない。もっぱら検討対象となっているのは「日本教育経営学会」が出している文献である。

 筆者が所属していた教育行財政研究室の伊藤和衛指導教授が編著となっている『教育経営の基礎理論』を読み返しながら、市川昭午先生の説くところをじっくり検討したいと考えている。

                                    <続く>


嶺井正也の教育情報

日本やイタリア、国際機関の公教育政策に関するデータ、資料などを紹介する。インクルーシブ教育、公立学校選択制、OECDのPISA、教育インターナショナルなどがトピックになる

0コメント

  • 1000 / 1000