2021(令和3)年3月16日 参議院文教科学委員会記録より

 秋田県の中学校で数学を教えている三戸学教諭が勤務して20年が経過するのに担任を持てまいままであることが国会(参議院)で取り上げられた。取り上げたのはれいわ新選組の舩後靖彦(ふなご やすひこ)議員。同議員のことはhttps://yasuhiko-funago.jp/をご覧あれ。


舩後議員は、そもそも教育関係において障害者雇用が極端に少ない問題をとりあげるなかで、三戸学教諭が長年担任できていないことを取り上げた。

舩後:先ほども紹介した障害のある教職員ネットワー クの一員でもある脳性麻痺がある公立中学校の数 学教諭から、二十年間教員をやっていて一度も普 通学級の担任を受け持たせてもらえないという相 談が寄せられました。この先生は子供の頃から特 別支援学校や特別支援学級ではなく普通学級でず っと学んできました。こうした経験もあり、教員 という職業を目指したそうです。教員になったと き、ほかの障害のない教員と同じように普通学級 の担任を経験できると思っていたにもかかわらず、 今まで計六校に勤務しても経験できないまま二十 年たってしまったとのことです。 学校の校務分掌、担任を決めるのは校長です。 今勤務している学校の校長先生は、担任をさせて いない理由として二つを挙げているそうです。一つ目が地震や火事などの緊急時に生徒の命を守る ことが困難であること、二つ目は保護者や地域の 不安の声が上がってくる可能性があることです。 しかし、いずれの理由も納得できるものではあり ません。 一点目の理由については、幼稚園児、小学校低 学年ではなく、中学生であれば的確な指示さえ出 せば自分の身は自分で守れますし、そのために避 難訓練をやっているわけです。避難訓練や学校防 災マニュアル策定の中で、障害のある児童や生徒、 教職員を含めて全体でどのように行動するのかと いう具体的な検討もなされていないのに、生徒の 命を守るのが困難というのは障害差別に当たるの ではないでしょうか。 また、二点目の理由についても、文科省の差別 解消法対応指針の不当な差別的取扱い及び合理的 配慮の基本的な考え方で、個別の事案ごとに具体 的場面や状況に応じた検討を行うことなく、一般 的、抽象的な理由に基づいて障害者を不利に扱う ことは適当ではないとされています。今まで数学 教諭として授業をする中で何らの不満や不安が本 人に寄せられていない中、保護者や地域の不安の 声が上がってくる可能性という未確認の懸念を理 由にすることは不適切な対応と考えます。 障害のない教員が二十年間学級担任を経験した ことがないということは通常あり得ません。二年間、授業や卓球部などのクラブ活動の指導にお いても生徒との関係も良好でありながら、このよ うな理由で担任になれないのはおかしいとは思わ れませんでしょうか。大臣の御見解をお願いいた します。

萩生田文部科学大臣」:ず一般論として 申し上げれば、担任を含めた学校における校務分 掌は各学校長の権限と責任においてなされるもの ですが、合理的配慮は個別の事案ごとに具体的場 面や状況に応じた検討を行うことが必要であると 考えています。障害のみを理由として、障害者で ない者との間で不当な差別的取扱いすることはあ ってはならないということは言うまでもありませ ん 個 。 別の事案については詳細を承知していないの でコメントを控えたいと思いますが、例えば今先 生が御紹介いただいたこの二十年選手の中学校の 先生で言うならば、確かに地震のときに自分が先 導して子供たちを誘導できないということがもし かしたらお体の関係であるのかもしれないんです けれど、中学生ですから、おっしゃるとおり、あ らかじめ避難訓練などでそういったことを身に付 けておけばいいと思いますし、私、こういうとき こそ、例えば加配教員ですとかアシスタントティ ーチャーですとか、こういう人たちの存在が意味 をするんじゃないかと思います。実は先ほどちょっと私答弁しようと思って、局 長が詳しく答えてくれたんですけど、最近、国立 大学の教職課程も障害を持つ学生さんが増えてき ました。残念ながら、最後、その出口で教員免許 を取ってくれない人たちも多いんですね。それは やっぱり、教育現場に立つといろいろ周りの人に 負担を掛けるんじゃないか、あるいはその途中で 自信を失ってしまって教師の道を諦めてしまう人 たちがいるんだとすれば、これはすごく残念なこ とで、インクルーシブ教育考えたら、障害のある 先生が学校に一人いらっしゃることで私は子供た ちの理解も高まるんだというふうに逆に思います ので、自信を持って最後まで教職で教員資格を取 ってもらうことを是非促していきたいなと思って いますし、またあわせて、せっかく、今日は午前 中からずっと申し上げていますけど、この四月か らもう日本の公教育はフェーズが変わるわけです から、少人数学級が始まりICTも使うわけです から、私は、そういった意味では、障害のある人 たちの雇用計画は日本中でもう一度教育現場で考 え直して、是非積極的に現場に入っていただくよ うなこともこの際きちんと考えていきたいと思っ ているところでございます。


 このやりとりを読む限り、文部科学大臣はまっとうなインクルーシブ教育の理解を示している。ぜひこの見解が秋田県に届くことを望むものだが、おうおうにして、インクルーシブ教育に関して日本の文部科学省は「建前え」で終始してきたことが想起される。もし、これが建前でないとしたら、私の文部科学省的インクルーシブ教育システム認識への批判を少しはゆるめなくてはならない。

嶺井正也の教育情報

日本やイタリア、国際機関の公教育政策に関するデータ、資料などを紹介する。インクルーシブ教育、公立学校選択制、OECDのPISA、教育インターナショナルなどがトピックになる

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