この記事は2020年1月19日、20日にアメーバブログに書いたものの再録である。
<2020年1月19日執筆>
2016年の欧州特別ニーズ・インクルーシブ教育研究機構の調査によると、イタリアで通常学級で学ぶ障害のある生徒は99.97%である。障害のある生徒のほぼ100%が通常学級に籍を置きながら、リソース教室を利用したり支援教員による支援をうけて学んでいることになる。ユネスコがインクルーシブ教育がもっとも進んでいる国として評価しているのは、前回のブログで紹介したとおりである。
逆にいえば、残りの0.03%の子どもたちはそれ以外で学んでいることになる。歴史的にみると、イタリアでは特別学級は廃止したが、特別学校は廃止はしていない。数が少ないのは保護者や本人が特別学校ではなく、通常学校をえらぶケースが圧倒的に多くなってきたからである。つまり選択されない存在になってきたのである。 では、イタリアの特別学校は近々なくなってしまうのだろうか。 実は衝撃的な記事を見つけた。2015年のものであるが題目は「どうして特別学校に惹きつけられるのか(Come sono attraenti le scuole speciali」というもの。記事が扱っているのは、Ledha(Lega per i diritti degli handicappati:ハンディキャップ者権利同盟) のディレクターであるGiovanni Merloが書いた「特別な魅力"L'attrazione speciale" (Maggioli Editore)」(http://www.superando.it/2015/07/13/lattrazione-speciale/ )というエッセイについてである。
実はその内容が衝撃的である。そのエッセイはロンバルディア州(ミラノが州都)の16の学校群(plesso)に、24校の特別学校があり、その内訳は幼稚園が5園、小学校17校、中学校2校。そこに通っている子どもたちは900人で、障害があると認定された子どものうちの3.8%にあたる。日本の事例と比較すると特別学校在籍者は2017年時点でやく20%であるから、イタリアは少ないものの、しかい、EU調査で示されている0.03%に比べると100倍以上になる。 本当だろうかと慎重に読み進めているが、これらの特別学校のほとんどがリハビリテーション附属の学校であると指摘されている。 別の記事「『およそ1000人の障害のある生徒を魅了する特別」学校Quelle scuole "speciali" che attraggono circa mille alunni con disabilità」( https://www.redattoresociale.it/article/notiziario/quelle_scuole_speciali_che_attraggono_circa_mille_alunni_con_disabilita) という記事では、うち国立が19校で、国立と私立の中間的学校(private paritarie)が私立が2校だという。
私がミラノにいた頃から今でも存在している国立ピーニ特別小学校(http://www.icspini.net/la-scuola/plessi/plesso-a)はセンター附属ではなく、通常の小学校2校、中学校1校と統合学区(学校群)を形成している。
この記事が衝撃的であるのは、ロンバルディア州だけではあるが存在する特別学校数が明示されていることと、これからの学校を選ぶ保護者が多いという事実を示したことである。
久しぶりにイタリア語を丁寧に読んでいるので遅々としてすすまいないが、なぜ特別学校が選ばれているのかについては記事をきちんと読んだうえで報告することにする。
<2020年1月20日執筆>
以上、イタリア・ロンバルディア州に存続している特別学校について書いたハンディキャップ者権利同盟のディレクターであるジョバンニ・メルロの書いた評論を紹介した。それによると、ロンバルディア州ではまだまだ特別学校が親による積極的選択の対象になっている現状があるようだ。ただ、同州のなかで万遍なく存在しているわけではなく、 ブレシア、クレモナ、ロディ、ソンドリオといった県にはなく、存在するのはコモ、レッコ、マントヴァ、モンツァ、ブリアンツァ、ミラノ、パヴィア、ヴァレーゼといった地域とのこと。
特別学校はモンツァ・ブリアンツァ県のコムーネ・セレーニョの一プレッソを除いてはリハビリテーションセンター附属であると紹介してあった。確かにセレーニョを調べてみると、「国立ジアンニ・ロダーリ統合学校」は、「ジアンニ・ロダーリ小学校」や「ノービリ幼児学校」など4つのプレッソで成り立っていて、そのなかにScuola primaria “G. Rodari” con annessa sezione per alunni con gravi (https://www.scuolarodari.edu.it/ )
がある。
ということは、リハビリテーションセンター附属でないのは確かだが、直訳すると「重い障害のある生徒のためのクラスがある『ジアンニ・ロダーリ』小学校」となる。この学校はミラノにある特別小学校と同じような形態であるので、セレーニョ以外はリハビリテーションセンター附属学校というのはおかしいとおもわれる。 この統合学校のうちジアンニ・ロダーリ小学校とジアンニ・ロダーリ特別学校は同じ建物を使っている可能性がある。というのもそこには「遊び・表現室」があり、そこで統合活動など行っているようだからである。この写真が「遊び・表現室」だとされている。
*ここで訂正:
上記の文章ではSolo in Lombardia sono attivi 16 plessi, all'interno dei quali sono presenti 24 scuole speciali di cui cinque dell'infanzia, 17 primarie e due secondarie di primo grado.という文章から判断して、plessoを学校群と訳したが、しかし、今日のブログを書くに際して調べたセレーニョのL’Istituto Comprensivo Statale “Gianni Rodari” の場合は、これを構成する個々の学校をplessoと位置付けているので、なんと訳すかがむつかしそう。とりあえずplesso=学校群は撤回しておきたい。
さて、ここで強調したいのはこの評論を書いたジョバンニ・メルロ(Giovanni Merlo)は、特別学校存続を是としているのではなく、「特別学校という分離教育コースの成功と魅惑が大きくなりつつあることは、障害のある子どもや若者の基本的人権を危険にさらすことになる。それは、障害のある人々が社会に完全に参加し、参加することを保証する私たちのコミュニティと社会システムの能力を削ぐことになる」という警告を発している点である。
早くからすべての子どもたちのための学校をめざし、統合教育をすすめてきたイタリアでは、障害が重いといわれる子どもたちのインクルージョンが完成しているわけではない。なぜそれが完成しないのかという疑問と警告を発したのがジョバンニ・メルロの評論だと思われる。
参考資料***************HP(一部翻訳)より*******
L’Istituto Comprensivo Statale “Gianni Rodari” (Tel. 0362263485) Codice MIIC84800C è costituito dai seguenti plessi:
(国立ジアンニ・ロダーリ統合学校は以下の4つのプレッソで成り立っています。)
1.Scuola dell’ Infanzia “G. Rodari” (ジアンニ・ロダーリ幼児学校)
Via Pacini 71 Seregno Tel. 0362263486 Codice MIIAA848019
2.Scuola dell’Infanzia “Nobili “ (ノービリ幼児学校)
Via L. Cagnola 37 Seregno Tel. 0362263492 Codice MIAA8484802A
3.Scuola primaria “G. Rodari” con annessa sezione per alunni con gravi disabilità(重度の障害のある生徒のための分教室があるジアンニ・ロダーリ小学校)
Via Pacini 71 Seregno Tel. 0362263481Codice MIEE84801E
4.Scuola secondaria di 1° grado “G. Mercalli”(ジアンニ・メルカーリ中学校)
Via Gramsci 17 Seregno Tel. 0362263487 Codice MIMM84801D
0コメント