糖原病について

糖原病(glycogen storage disease)について、苅谷俊介さんのブログを通じて初めてしった。そして、糖原病のお子さんの症状、食事療法、学校生活のことなど、お子さんをお持ちの保護者の方からいろいろと教えていただいた。

その一部をここに引用しておきたい。

<ぺんぺんママさんから>

その1

「糖原病は、血糖値の維持管理(コントロール)と摂取制限ありの食事療法で過ごしております。型によって症状が違い、摂取制限も違います。そして同じ型でも、症状には個人差がかなりあります。

娘の主治医は、娘と同じ糖原病Ia型患者です。主治医が言うには、糖原病患者は基本みんなと同じように学校生活は送れるとの事です。(学校生活に制限はない)

給食においては、型によって摂取制限に違いがあり、患者それぞれがお弁当を持参したり、食べれない物が出る場合は、患者自身が制限したりしているみたいです。

自治体や学校側が配慮してくれたり、患者個人がしなきゃいけなかったりと、地域差はかなりあるようです。

今、糖原病患者家族の方と(35人ぐらいですが)情報交換をしています。

小学校以上の子供さんがいる方のお話を聞くと、ほとんどの方が通常学級に通う事が出来ています。うちの娘は、低血糖になる頻度が高く、普通学級では無理だと元主治医から病弱学級または支援学校を勧められ、今病弱学級に通っております。

糖原病患者家族の方と知り合うまでは、糖原病患者は支援学級に通ってる子がほとんどかなと思っていましたが、普通学級に通っている子供の方がほとんどだと知りビックリしたぐらいでした。やはり同じ糖原病患者でも個人差が大きいです。

糖原病の医療的ケアは、血糖値測定です。血糖値測定器の種類も2種類あり、針を毎回刺すタイプを使用している場合は、学校では医療行為に当たる為、娘の学校には看護師さんが常駐してくれています。(学校内で医療行為があるのは娘だけです)

そして娘の場合は、血糖値測定器の使用だけではなく、低血糖の頻度が高く症状も強く出る為、看護師さんには常に見守るよう元主治医からは指示されております。

糖原病患者の医療的ケアは、自治体や患者の個人差もある為、皆が皆同じではないようです。」


その2

日本では患者数も少なく、糖原病という難病がある事さえ周知されていません。糖尿病患者と同様に血糖値管理をしなきゃいけないのに、糖原病は血糖値測定器は保険適用外です。

(その為、患者内で格差もあります。)

糖原病は今現在日本ではこのような扱いな為、食事療法が必要な難病であるにも関わらず、各自治体や個人に任せてる状態です。

普通学級に通っている子供の医療的ケアは、学校によって違いはあると思います。娘と同じ歳で同じIa型の子供さんは、普通学級に通っており、血糖値測定は針を毎回刺さないタイプの持続血糖値測定器を使っている為、この測定器だと医療行為にはならず、看護師ではなく、保健室の先生が測ってくれているみたいです。

(センサーに機械をあてるだけで測れるタイプ)

遠足や修学旅行なども基本参加は出来ますが、血糖値測定や補食に必要なコーンスターチ摂取などは、学校によって対応がかなり違いがあるようです。修学旅行の場合は、事前に親が宿泊先に電話をして、提供される献立を聞いたりして、摂取制限に引っかからないか確認しているようです。食べれない物がある場合は、宿泊先が考慮してくれたりと様々です。

小学生になると、子供はそれなりに大きくなるので、遠足や修学旅行では自分で出来るようになるので、親などの介助はあまり必要なさそうです。個人差はありますが。

しかし遠足やお泊りの時に一番大変なのは、幼稚園保育園のようです。たまたまその相談をされていた方々の話をつい最近聞いた所です。お泊り保育の時の夜間のコーンスターチや特殊ミルクの摂取を、幼稚園保育園側が出来ない場合は、夜中に親が現地まで行き、補食をさせているようです。

子供が小さい内は、親の介助が幼稚園や保育園では何かといるようです。」



多くのお子さんが通常学級に通っていること(ぺんぺんママさんのお子さんの場合は病弱学級)が分かったものの、学校生活を過ごすに際しての配慮の在り方は種々ありそうだ。

障害者の権利条約や日本の「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」をきちんと踏まえるならば、その配慮がお子さんや家族にゆだねられるというのはおかしいし、合理的配慮をしないという「差別」にもあたる。

そもそも日本では、文部科学省が平成27年3月に「校給食における食物アレルギー対 応 指 針」をまとめた移行、自治体でも指針づくりがすすんでいるが、食事療法が必要な糖原病はそこには含まれていない。

もう少し実態を知って、関係機関に働きかける必要がある。


日本の状況がおぼろげながら見えてきたところで、アメリア合衆国での対応を調べてみたら、コネチカット州の事例がヒットした。その後、他の州について少し調べてみたが、ヒットしない。どうやら、アメリカでも行政が糖原病とその対応についてきちっとフォローしているのは少ないようだ。もちろん、いわゆる食物アレルギーについての取り組みは進んでいる。

なぜコネチカット州で取組がすすんでいるのかについては、これから調べることにするが、コネチカット州での大まかな歩みは次のようである。

2006年に州の「生命を脅かす食物アレルギー管理指針(Guidelines for Managing Life-Threatening Food Allergies in Connecticut Schools)」を作成している。糖原病を含めるようになった改訂版が作成されたのは2020年である。



しかし、同州に属するニューヘブン公立学区で改訂版の「生命を脅かす食物アレルギー及び糖原病管理指針Management Guidelines for:Food Allergies & Glycogen Storage Disease (GSD)」が作成されたのは2018年となっている。州よりも先行している。地方自治を優先するアメリカらしいあゆみではあるが、詳細はこれから調べることとする。


嶺井正也の教育情報

日本やイタリア、国際機関の公教育政策に関するデータ、資料などを紹介する。インクルーシブ教育、公立学校選択制、OECDのPISA、教育インターナショナルなどがトピックになる

2コメント

  • 1000 / 1000

  • 嶺井正也

    2022.06.30 01:30

    @苅谷俊介コメントありがとうございます。ご提案の件ですが、通常学級における看護師配置の可能性なども含め、皆様と相談していければいいかな、と思いますので、また、この前の対応指針改定案も含め、考えていければいいかなあと思っています。しかし、お子さんたちの成長の早いし、時間が限られていますので、急ぐ必要なありますね。よろしくお願いします。
  • 苅谷俊介

    2022.06.29 22:13

    コネチカット州のニューヘブン公立学区で、糖原病を含める改訂版が作られたのが2020年ということは、 日本での『学校給食における食物アレルギー対 応 指 針』の改訂版に〝糖原病〟を含めようとするには、相当の 時間がかかりそうですね。 嶺井さんが翻訳なさっておられる『インクルーシブ教育システム』のモデル学校を設立し、 その中で『学校給食における糖原病及び食物アレルギー対 応 指 針』(仮)を作成し、実施した方が早いのでは、 と思うのですが、如何なのでしょうか。