小畑精武『語りつぐ東京下町労働運動史』


 今から何年前になるだろうか、江戸川区のある集りで同窓大学の先輩になる著者と出会ったのは。

大学を出てから一貫して下町の労働運動に携わってきた著者の思いが凝縮した一冊になっている。

 第Ⅴ章第13節「華やかな女性の憤慨」では、待遇に不満を爆発させた松竹レビューガールたちが水の江瀧子などのスターを中心にストライキ(1933年6月)を決行したことが紹介されている。「スターが先頭に立った争議への支援は全国に広が」った。しかし、松竹側は水の江瀧子たちを解雇したが、彼女たちは湯河原温泉の貸別荘を借りて立てこもった。これに対してもファンがお菓子やうどんを差し入れた。

 だが、水の江は女優の原泉(作家中野重治の妻)とともに七月一二日に思想犯として特高に検挙され、警察署に留置。ここでも水の江は抵抗し、一日で釈放され、会社側を交渉を再開したが、会社側は彼女を含む一〇数人を謹慎処分にした。

 この間、水の江は日比谷公会堂でワンマンショーを開き、多数の観客が押し寄せ、一方、会社側の歌劇団は不振続いた。その結果、ついに会社側がおれ、水の江たちは復帰を勝ち取った。

 

 水の江の人気ぶりと確固とした生き方を知ることができる、こんなエピソードが満載の本書をじっくり読み続けているところである。

嶺井正也の教育情報

日本やイタリア、国際機関の公教育政策に関するデータ、資料などを紹介する。インクルーシブ教育、公立学校選択制、OECDのPISA、教育インターナショナルなどがトピックになる

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